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COLUMN

君は『預言者』を知ってるか

君は『預言者』を知ってるか

君は『預言者』を知ってるか
ライター

河守 晃芳

~カリール・ジブラン著『預言者』について~

 

 

 

文明が高度に発達し、人々の暮らしはより便利になっているが、「どう生きればいいのか」という至上の命題には、まだ人類は答えられずにいる。人々はよりよい生き方を模索しているが、人の人生に明確な「答え」など有りもしない。だが、だからこそ人は、その答えを模索し続けるのであろう。

 

『預言者』(原題『The Prophet』)という本は、私たちに一つの生き方を提示してくれる。この本は、私が読んできた本の中で、最も優れた思想書の一つだ。明快にして簡潔な文章の中に、生きていく上での真理が強烈に香っている。美しい本だ。読み進めるにつれ、あなたの心に強いメッセージが訴えかけられることがわかるだろう。

 

 

全世界で2000万分以上売り上げた『預言者』。預言者とは、神の意志を伝える者を意味する。

 

 

なぜ紹介するのか?

 

 

それにしても、なぜ私がこの本を紹介するのか?それは、世界的な知名度や内容の高度さとは裏腹に、日本ではほとんど知られていないからだ。これは、世界中で2000万部以上も売れた本である。それなのに、日本では書店に並んでいるところすら、見たことがない。多分、これを読んでいる皆さんも『預言者』という本の存在すら聞いたことがないと思う。私は、そんな現状だからこそ「この本を紹介したい」と強く感じざるを得なかった。この記事を読んで、一人で多く『預言者』に触れる方が増えてくれるならば、幸いである。

 

『預言者』の著者であるカリール・ジブランは、1883年に中東のレバノンで生まれた。キリスト教の家庭に生まれた彼は、幼少期から真理への渇きをはっきりと顕していた。様々な葛藤なしに生きていくことは出来なかった彼は、驚くべきことに、『預言者』の草稿を15歳の時に書き上げたのだった。今から120年も前のことである。

 

しかし、無名の詩人だった彼に何ができよう。『預言者』が出版されることになったのは、草稿を書いてから約20年も後のことだった。もちろん、その空白の20年が、彼に長い推敲の時間を与えたことは確かだ。実際、彼はその期間に多くの思想に触れ、何度も推敲を繰り返している。その長い20年が、結果的にこれほどの美しい本を生んだのだった。

 

『預言者』が初めて出版されたとき、この本のあまりの素晴らしさに、世論は大層沸き返ったという。この本の思想は世界的なブームを巻き起こし、世界中で2000万部も売り上げた。これは、単一書籍による販売部数で、世界トップ50に入る快挙である。著者自身も「20世紀のウィリアムブレイク」と最大の賛辞を贈られ、数多くの名声を得ることになった。だが、不幸なことに、出版のわずか8年後、彼はこの世を去ることになる。弱冠43歳であった。金子みすゞしかり、樋口一葉しかり、天才的な著作家は、早世してしまうものなのだろうか。

 

 

わずか43歳の若さで亡くなったカリール・ジブラン。天才は、夭逝してしまうものなのだろうか。

 

 

ところで、わたしのこの本との思い出を書こう。私はこの本を少なくとも100回以上は読んだ。私は、一冊の本を、何度も繰り返し読むのが好きなのだ。繰り返し読むに値する本は少ないが、この本には間違いなくその価値がある。思い返せば、私の『預言者』との関わりは長い。だからこそ、数多くの思い出がある。なにか辛いことがあったときは、何度も噛みしめるようにして読んでいた。それだけ自分とともに生きてきたのである。

 

この記事の最後として、一章だけ『預言者』の内容を紹介しよう。この本は預言者(神の言葉を伝える人のこと)であるアルムスタファが人々の疑問に答えるという体で話が進んでいく。
今回紹介するのは、その中でも「苦しみについて」という章である。以下の文章は、私がその章を自分なりに解釈し、自らの言葉で「私訳」したものである。そのため原著とはかなり内容が異なっている。あらかじめ了承いただきたい。「私訳」するにあたって、市販の翻訳を参考にさせて頂いた。

 

以下、『預言者』から抜粋(私訳)

 

 

苦しみについて

 

 

苦しみ、それはあなたの思い込みの殻が壊れること。

 

鶏が外の世界に出るためには、まずその殻が壊れなけばならないように、あなたも苦しみを知らねばなりません。

 

あなたの日々の生活に起こるさまざまな奇跡への驚き。それを心にいつも生き生きと持てたなら、苦しみも喜びと同じくらい、不思議にあふれていることがわかるでしょう。

 

過ぎていく季節をいつも自然に受け止めてきたように、心の季節もあなたがたがそのまま受け止められたなら、どれほど素晴らしいことでしょう。

悲しみの冬が来ても、静かに目を見張っていられてなら、愛があなたを包み込むでしょう。

 

たしかに、生きていれば、必ず苦しいことがあるでしょう。でも、どうしてそれを不幸と決めつける必要があるでしょうか。それは偶然ではなく、あなたに必要なことだというのに。

 

「こんなに辛い想いをするのだったら、あの人と恋なんてしなければよかった」などと、人はなぜ嘆くのでしょうか。悲しみがあなたの人格に「深み」をもたらしてくれるというのに、どうしてそれを否定しようとするのでしょうか。辛い経験を乗り越えれば乗り越えるほど、人の心はより強靭になるというのに。

 

苦しみのほとんどは、あなたが選んだものなのです。

 

それは、あなた自身の内なる医師が、病んでいる自分を癒そうとして盛った苦い苦い一服。

 

それゆえに、その医師を信じなさい。そしてその薬をしずかに飲み干しなさい。

 

なぜなら、その薬がどんなに苦く、飲むのが耐えがたかったとしても、運命の優しい手に導かれているのですから。

 

もたらされた杯がどんなにあなたの唇を焼いたとしても、それは陶工が、自らの聖なる涙をしめらせた土で作られているですから。

 

 

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