作成日: 2020年6月19日 最終更新日:

京都大学 経済学部 合格体験記


初めまして。私は令和2年度、京都大学経済学部の特色入試に合格して入学しました。この記事を見てくださっている方は、京大の特色入試について興味がある人、京大一般受験を考えている人、難関大の総合型選抜入試の受験を考えている人など、それぞれだと思います。
特に、全国の京大志望者の受験生は、一般受験を前提として受験勉強をしている方が大半ではあると思いますが、是非とも特色入試についても知っていただきたく、この記事を執筆しています。
以下は私の『合格体験記』という形で話していきます。 

特色入試って何?

そもそも京大の特色入試のことをご存知ですか?
特色入試とは、簡単に言ってしまえば京大の総合型選抜のことです。  

①高等学校での学修における行動と成果の判定 
②個々の学部におけるカリキュラムや教育コースへの適合力の判定 

の2つが主に重視されています。 

学部によってはTOEFLなどの英語試験の成績や、数学オリンピック出場等が出願条件になります。
また、令和2年度の特色入試最終合格者は129人であり、これは一般入試の合格者数2725人の約4.7%にしか満たないです。これまでの話を通して、「特色入試は高校時代の顕著な成績が求められ、ある分野で突出した成績を持つ天才肌のような人たちしか受かりそうにない…。」というイメージを持つ人が多いと思います。しかし、少なくとも私が受験した経済学部は、そんなことはないです。
詳しくは次の項で説明します。

経済学部の特色入試について

経済学部の特色入試は、天才肌のような人たち以外でも合格可能だと私が断言する理由は主に3つあります。 

1つ目は、出願条件に高校時代の顕著な成績が求められないからです。経済学部では、高等学校作成の調査書、そして学びの設計書という受験者作成の提出書類がありますが、これは顕著な成績が“あった方が良い”に過ぎないです。
提出書類は合計で100点に換算されますが、正直提出書類では基本的に最高点と最低点で20点ほど、大きくても25~30点程しか差がつかないと思います。十分大きいように感じるかもしれませんが、論文試験での逆転は大いに可能でしょう。なぜなら論文試験は500点に換算されるからです。こちらは受験者間で得点に大きな差がつきます。論文試験で合否が決まると言っても過言ではないのです。
この論文試験については次で詳しく解説します。

2つ目は、試験内容が一般受験に通じる部分がたくさんあり、比較的一般受験対策をしながらも受験しやすいからです。先ほど論文試験について軽く説明しましたが、試験問題とはまさにこの論文試験についてのことです。論文試験では、例年2つの日本語の課題文を読んでそれぞれの文章の要約や、共通点や相違点、そして現代社会の課題に筆者の考えを当てはめて自分で議論を進め、意見を主張するというものでした。これは膨大な量の難しい現代文の評論を速読をし、解答していくというものですが、一般受験の現代文評論の問題の練習にもなると思います。また、令和2年度では傾向がこれまでと異なり片方の課題文が英語の評論になりましたが、この英語の設問でも、下線部和訳や、内容説明問題等、一般受験の英語の問題に共通するところが多く見られました。英語の課題文は来年度以降も出題される可能性は十分にあると思います。詳しくは過去問などを参照していきましょう。 

そして3つ目は共通テストの得点が概ね720点以上でよいということです。そしてこのセンター試験の点数は、特色入試自体の点数には換算されませんでした。本当にただの足切りに過ぎないということです。センター試験で失敗してしまい、一般受験での合格が不安な人、一般受験では京大レベルには達していないという人も、受験可能という点はとても重要です。実際私もセンター試験の点数は、一般受験では厳しいかもしれない点数でした。 

以上の3点が経済学部受験の魅力ですが、経済学部以外にも高校時代の顕著な成績が求められない学部は複数あります。各自興味ある学部について調べてみるのもいいでしょう。 

京大を志望した理由と特色入試を考え始めた時期について

ここでは私の京大志望理由と、特色入試の受験に至るまでの大まかな流れを示していきたいと思います。 

私が京大を視野に入れたのは、高校二年生の春です。一年時までは、漠然と神戸大など難関大に行きたいとしか考えていませんでしたが、どの大学を志望するにしても、勉強はしなくてはいけないとは思っていたので、続けてはいたという感じです。
面談で初めて「京大」について考えてみてはどうかと言われたのがきっかけでしたが、当時の自分にとって、京大は雲の上のような存在であり、周りに同志望も少なく、オープンキャンパスにも行ったことはなかったので、京大志望といっても一切の実感はありませんでした。
本格的に京大志望を固めたのは、高2の冬に私の住んでいた県の合同勉強合宿で、多くの高い意識をもった東大京大志望と過ごした時だと思います。なので、どんな機会でも良いので、同志望の友達や在学生の先輩と関わる機会をしっかりと活用してもらいたいです。
きっと自分の考えやモチベーションが変わるはずです。

その後、私が特色入試での受験を考えたのは、高校2年生の秋頃でした。高3に近づくにつれて、模試の成績などがいまいちでとても不安でした。本格的に京大受験を考える中で、前期だと現役合格では合否の微妙なラインだと自覚し、その中で様々な長所をもつ特色入試を知り、自分に向いていると思ったからです。
特色入試の魅力については次の項に書いていきます。 

特色入試のメリット

何より合格発表が前期よりも約1か月も早い!

これは自分が合格後に最も感じたメリットです。特に京大受験経験者はわかると思いますが、追い込み期間の精神的苦痛は異常です。少なくともあれほどの苦痛を、私は今までの人生で味わったことがありません。周りの集中力が必死に食らいつかないと、あっという間に置いて行かれてしまいます。なので、合格するとこれ以上にない解放感を味わうことができます。また、前期受験者は何千人もいてすぐに物件が埋まってしまいます。早い段階だとお家探しにも最適です。 

自分が入学後、そして卒業後何をしたいか考える最高の機会になる

特色入試には一次選考の段階で書類選考があります。いわゆる「学びの設計書」です。自分が高校でしてきたこと、志望理由、入学後、そして卒業後に何をしたいかなどを書きます。
前期受験だと、大学内の詳しい仕組みまで調べる時間はあまりないですが、特色勢は必ず調べないといけません。でもこれのおかげでビジョンが明確になり、モチベーションに繋がります。

自分の強みを活かせる

私は現代文と英語が得意で、数学が苦手でした。そして、小論文を書いたりするのには少し自信がありました。そんな中、経済学部の特色入試は提出書類100点、論文試験500点で、顕著な出願資格が必要ないのだという事を知り、自分にピッタリな試験だと思いました。
他学部では、数学オリンピックやTOEFLのスコアが求められますが、経済学部はセンター試験の足切り以外、資格が何もいらないのでなおさら受験しやすかったです。

倍率に惑わされるな!

倍率は前期よりも高く、定員人数取られないなど、とても狭き門に感じられる特色入試ですが、全ての学部・学科がそうとは限りません。特色入試は前期ではあまり求められない力が求められる傾向にありますが、経済学部の試験、特に今年の英文とその設問については、前期の英語と似ています。
また、経済学部をはじめとしたいくつかの学部は、前期に京大を受験しない人も多く受験するという話を聞いた事があります。
これらを踏まえると、前期よりも合格可能性が高いといえそうです。 

受験機会が一度増える

私は私立大学を受験しなかったので、受験練習も兼ねて特色入試を受験しました。直前期に実際に京都に行くことは新生活のイメージを膨らませてモチベーションを上げるためにもかなり良かったと思います。 

次は具体的な試験対策と試験当日の流れについて話していこうと思います。

書類選考(学びの設計書)について 

経済学部の場合は①高校時に取り組んだこと②志望理由③入学後何がしたいか、大学卒業後どうしたいか、以上3つについて書きました。
学部によって違うかもしれないので各自受験を考えた時点でチェックしておくべきです。私は決めた時点で、学校の総合的な学習の授業や保健の授業のレポート作成等の時、全てを関連させて調べるようにしていました。
学びの設計書が書きやすいし、何より、たとえテーマは違っても共通している考え方や要素を見出すというスキルは京大の論文が最も求めていることだと思ったからです。その訓練を学校の授業の中でしました。特色入試の対策はすべきですが、前期も京大を目指す人にとってはいかに効率よく対策をできるかの時点で、合否はある程度決まるのかもしれません。

ちなみに自分は帰宅部で○○オリンピックといった実績はないです。そこはあまり気にしなくてもよいと思います。本格的に学びの設計書を書き始めたのは夏休みの終わりです。学校の先生に毎日放課後添削してもらいました。しっかり構想を練るためにも、前期の勉強もおざなりにしないためにも、まだ時間がある夏休み明け頃には取り組むべきだと思います。

論文試験対策について

学びの設計書がある程度仕上がってきたら論文試験対策を始めました(大体10月初旬)。最初過去問を解いたとき、先生からの評価が悪く、もう少し簡単な大学の問題から取り組むことにしました。徐々にレベルを上げていきました。こちらも先生に放課後ひたすら添削してもらいました。 

また、京大の膨大な量の速読になれるため、そしてネタ集めのため、構想メモ作りのため、自分で、過去問に加え慶應大と名古屋大法学部の問題にも取り組みました。また直前1週間前には「小論文これだけ!」シリーズの法と経済編を流し読みしました。構想メモについてはまず設問を読み、問題文を読みながら段落ごとに端に何について書かれているか単語レベルでまとめるにとどめました。時間的にも、まともに下書きをする時間はないと思っておいたほうが良いです。 

英文対策に関しては京大英語の対策をしていれば良いと思います。京大の過去問でも良いし、ポレポレや英文解体新書、英文読解の透視図等、構文把握の参考書を挟んでおくと良いと思います。内容説明問題に関しては、一橋大学の問題などもおすすめです。

試験当日の流れとエピソードについて

試験前日は受験前の過度の緊張を防ぐため、1日中京都を観光しました。その疲れと、試験が午前中に行われるということもあって、11時前ぐらいに寝て6時前に起きました。私は自分でなかなか起きれないので母親に起こしてもらいましたが(笑)、当日は起床時、とても頭がすっきりしていて、これは合格できるかもしれないと謎の自信が湧いていました。前日に気分転換で観光したことが功を奏し、試験終了まで緊張することはありませんでした。
試験直前、そして試験中に緊張することがなかったのは、今までやってきたことに自信があったこと、そして合格できると自分に言い聞かせていたからだと思います。なのでこれは受験生の皆さんにも是非意識して欲しいです。 

試験内容面について、英語の対策を一切していなかったので問題を見た途端「やばい」ととても焦りました。案の定、英語の課題文は1回目に読んだときは全く内容が入ってきませんでした。しかし、元々英語がやや得意だったこともあり、落ち着くと2回目はすんなりと内容が入ってきました。落ち着いて2回目を読むことができた理由は、自分が速読が得意だったことだと思います。1つ目の日本語の課題文を読み、設問に答えたときかなり時間的な余裕がありました。やはり特色入試においては速読が最も重要になると思います。
結果的に全ての解答終了時には40分余っていて、そこから落ち着いて日本語訂正や、自分が自信がない部分を再考しました。開示の点数はあまり高くはありませんでしたが、受験終了直後はこれで落ちたら実力不足だ、しょうがない、というくらいには自分の実力を出せた気がしていました。自分に自信を持つと精神的には有利かも知れません。 

補足なのですが、配られる下書き用紙は使わない方がいいと思います。自分が受験生時代、合格した先輩の受け売りではありますが、とても参考になりました。

まとめ

とても長くなりましたが、読んでくださりありがとうございました。少しでも皆さんの力になれたなら嬉しいです。この記事を読んで、特色入試についてより多くの人が興味を持ってもらえれば、書いた甲斐があるかな、と感じます。

受験勉強の道のりは長くてしんどいとは思いますが、息抜きも大切にしてください。そして、今自分が志望大学合格に向けて勉強できている環境に、感謝してほしいです。学校や塾、予備校に行き、参考書を手にし、そして大学進学を認めてくれ、精神的にも支えてくれる親がいること。一緒に勉強をする友達がいること。勉強を教えてくれる先生がいること。そういう身近な人の存在に感謝しながら勉強を頑張ってください。
皆さんと京大でお会いできることを楽しみにしています。