慶應義塾大学入試での小論文の実施状況
慶應義塾では、入試試験教科に国語がなく、代わりに小論文が出題される学部があります。
入試方式
小論文の必要な入試方式は下記の通りです。
・一般入試
・推薦入試(自主応募)
・総合型選抜(旧AO入試)(B方式)
実施学部
一般入試、推薦入試(自主応募)、総合型選抜(旧AO入試)の中で、どの学部で小論文試験が行われているかをまとめました。
一般入試
・文学部(外国語・地理歴史・小論文)
・経済学部A方式(外国語・数学・小論文)
・経済学部B方式(外国語・地理歴史・小論文)
・総合政策学部(数学または情報あるいは外国語あるいは数学及び外国語・小論文)
・環境情報学部(数学または情報あるいは外国語あるいは数学及び外国語・小論文)
・看護医療学部(外国語・数学あるいは化学あるいは生物・小論文)
なお、法学部では論述力の試験、商学部B方式では論文テストがあります。
推薦入試(自主応募)
・文学部
総合型選抜(旧AO入試)
・法学部B方式(第2次選考)
慶應義塾大学の小論文の傾向
慶応義塾大学の入試の小論文について、入試年度、出題パターン、出題内容、出典をまとめました。
出題パターンについて
課題文読解型Ⅰ
与えられた資料のうちの主たるものが日本語の課題文であり、一定の主題について見解を述べることだけが求められている問題です。
課題文読解型Ⅱ
与えられた資料のうちの主たるものが日本語の課題文であり、要約・説明を求める設問が含まれている問題です。
教科論述型問題
教科の知識のみで解答可能であり、解答が一義的に定まる問題です。
文学部
2018年度
課題文読解型Ⅱ(人文系)行為者の「自由」の問題
出典:國分功一郎『中動態の世界―意志と責任の考古学』、医学書院、2017年
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(人文系)
出題内容:「分け与える」ということ
出典:小川さやか『「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済』、光文社新書、2016年
2016年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(人文系)
出題内容:「名付け」における自由と構造
出典:四方田犬彦『犬たちの肖像』、集英社、2015年
経済学部
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅰ(社会科学系)
出題内容:市場型社会における公平な分配ルールの形成
出典:亀田達也『モラルの起源―実験社会科学からの問い』、岩波書店、2017年
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:組織におけるソクラテス的論者
出典:マーサ・C・ヌスバウム『経済成長がすべてか?―デモクラシーが人文学を必要とする理由』、小沢自然/小野正嗣 訳、岩波書店、2013年
2016年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:消費行動とリベラルな自由
出典:マイケル・サンデル『公共哲学 政治における道徳を考える』、鬼澤忍 訳、筑摩書房、2011年
法学部(論述力)
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:リスク社会への対応と信頼のあり方
出典:小松丈晃「リスク社会と信頼」、『社会生活からみたリスク』、今田高俊 編、岩波書店、2013年
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅰ(社会科学系)
出題内容:立憲主義と公私の区分
出典:長谷部恭男『憲法と平和を問い直す』、筑摩書房、2004年
2016年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:世界文明の到来とナショナリズム
出典:山本新『人類の知的遺産74 トインビー』、講談社、1978年
商学部B方式(論文テスト)
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:過去の生活費用の現在価値への換算、フリー・イノベーションの効用
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:専門と教養
出典:石井洋二郎/藤垣裕子『大人になるためのリベラルアーツ』、東京大学出版会、2016年
パターン:課題文読解型Ⅰ(社会科学系)
出題内容:共変関係と因果関係
出典:E.B.ゼックミスタ/J.E.ジョンソン『クリティカルシンキング《入門篇》』、宮元博章/道田泰司/谷口高士/菊池聡 訳、北大路書房、1996年
2016年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:なぜ大学はレポートを課題に出すのか
出典:山口裕之『コピペと言われないレポートの書き方教室―3つのステップ』、新曜社、2013年
総合政策学部
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:選択理論と多数決
出典:佐伯胖『「決め方」の論理:社会的決定理論への招待』、東京大学出版会、1980年
坂井豊貴『多数決を疑う:社会的選択理論とは何か』、岩波書店、2015年
ケネス・J・アロー『社会的選択と個人的評価 第3版』、長名寛明 訳、勁草書房、2013年
イツァーク・ギルボア『合理的選択』、松井彰彦 訳、みすず書房、2013年
遠藤妙子「ゲーム理論と政治過程」、『公共経済学の理論と実際』、中村慎助/小澤太郎/グレーヴァ香子 編、東洋経済新報社、2003年
A.M.フェルドマン/R.セラーノ『厚生経済学と社会選択論[原書第2版]』、飯島大那/川島康男/福住多一 訳、シーエーピー出版
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:統計の示す相関関係と因果関係との違い
出典:久米郁男『原因を推論する─政治分析方法論のすゝめ』、有斐閣、2013年
ウォルター・ミシェル『マシュマロ・テスト─成功する子・しない子』、柴田裕之 訳、早川書房、2015年
ジェームズ・アレン『「原因」と「結果」の法則 コミック版』、小山高生 潤色・脚本、高見さちこ 作画、サンマーク出版、2009年
『社会格差と健康─社会疫学からのアプローチ』、川上憲人/小林廉毅/橋本英樹 編、東京大学出版会、2006年
『社会と健康─健康格差解消に向けた統合科学的アプローチ』、川上憲人/橋本英樹/近藤尚己 編、東京大学出版会、2015年
上村豊『客問題の考え方─結果から原因を探る数学』、講談社、2014年
2016年度
課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:国際比較、世代間移動、高齢化から見た格差
出典:橘木俊詔『日本の経済格差―所得と資産から考える―』、岩波書店、1998年
トマス・ピケティ『21世紀の資本』、山形浩生/守岡桜/森本正史 訳、みすず書房、2014年
佐藤俊樹『不平等社会日本―さよなら総中流』、中央公論新社、2000年
石田浩/三輪哲「上層ホワイトカラーの再生産」、『現代の階層社会[2]―階層と移動の構造―』、石田浩/近藤博之/中尾啓子 編、東京大学出版会、2011年
大竹文雄『日本の不平等―格差社会の幻想と未来』、日本経済新聞社、2005年
環境情報学部
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:ものごとを創造する能力
出典:C・V・オールズバーグ『ハルス・バーディックの謎』、村上春樹 訳、河出書房新社、2015年
C・V・オールズバーグ「オスカーとアルフォンス」、村上春樹 訳、『ハリス・バーディック年代記 14のものすごいものがたり』、河出書房新社、2015年
2017年度
パターン:課題文読解型Ⅰ(社会科学系)
出題内容:慶大環境情報学部で専攻し研究したい課題
2016年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(社会科学系)
出題内容:モノやコトによる生活や人の意識の変化
出典:西岸良平「テレビがわが家にやってきた!」『夕焼けの詩13-雪うさぎ―』、小学館、1982年
リチャード・ランガム『火の賜物―ヒトは料理で進化した』、依田卓巳 訳、NTT出版、2010年
関根千佳『ユニバーサルデザインの力 社会人のためのUD入門』、生産性出版、2010年
西垣通『スローネット―ⅠT社会の新たなかたち』、春秋社、2010年
『ソーシャルデザイン―社会をつくるグッドアイデア集』、E.グリーンズ 編、朝日出版社、2012年
横井軍平『決定版・ゲームの神様 横井軍平のことば ものづくりのイノベーション「枯れた技術の水平思考」とは何か?』、スペースシャワーネットワーク、2012年
ちきりん『社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう!』、大和書房、2012年
看護医療学部
2018年度
パターン:課題文読解型Ⅱ(自然科学系)
出題内容:保全すべき生態系は自然の場の多様性
出典:宮下直『生物多様性のしくみを解く』、工作舎、2014
2017年度
課題文読解型Ⅱ(人文系) 多事争論と惑溺
(出典)坂本多加雄『新しい福沢諭吉』、講談社現代新書、1997年
・2016年度 課題文読解型Ⅱ(人文系) 福沢諭吉のリベラリズムの思想
(出典)宇沢弘文『経済学と人間の心』、東洋経済新報社、2003年
慶應義塾大学の小論文の対策
学部によって出題パターンの傾向が揃っています。必要な学部の出題パターンに沿って対策をとる必要があります。まずは「出題分を正確に読み解き、解答の骨組みを考える」という練習を重点的に行いましょう。
また、解答文字数が多い傾向にあります。緊張と焦りで、文章理解や論述の構成が決まらないまま書き始めると、論理展開に行き度まったり、再度読み直す作業が必要となります。
そうならないためにも、正確に切り口を発見し、骨組みを構成する作業を迅速にできるように、日頃の小論文の演習を行いましょう。
『
高得点が取れる小論文の構成について知る!』